「追っかけ便」という言葉を耳にしたことはありますか?
とくに鮮魚業界では、この“追っかけ”スタイルのトラック輸送が今も重要な役割を果たしています。
水揚げされたばかりの魚を、いち早く市場へと届けるためのスピード勝負の仕事。
それが「鮮魚追っかけ便」です。
深夜や早朝に発車し、時間との戦いのなかで市場へ駆け込むドライバーたち。彼らの働きぶりや収入、そして仕事内容は、一般的な運送業とは一味違います。
この記事では、鮮魚の追っかけ便とはどんな仕事なのか、どんな人に向いているのか、そしてどれくらい稼げるのかを、分かりやすく解説します。
未経験から挑戦したい方や、物流業界に興味がある方もぜひ参考にしてください。
「追っかけ便」とは何か?
物流業界や市場関係者のあいだでよく耳にする「追っかけ便」。
とくに鮮魚を取り扱う現場では、この追っかけ便の存在がなくてはならない重要な輸送手段となっています。
聞きなれない言葉かもしれませんが、実は多くの人の食卓に新鮮な魚が届く背景には、この仕組みが深く関わっているのです。
ここでは、「追っかけ便」とは具体的にどのような輸送方法なのか、また、なぜ鮮魚輸送で特に重要視されているのかを解説していきます。
生鮮品輸送における“追っかけ”の意味
「追っかけ便」とは、主に鮮魚や青果など、鮮度が命の商品を迅速に市場へ届けるためのトラック輸送の形態を指します。名前の通り、「前を走るトラックを追いかけるように」次々と出発していくスタイルが特徴で、時間差で連続的に出発することから「追っかけ便」と呼ばれています。
この方式は、生産地から中央卸売市場などへ鮮魚を運ぶ際によく使われます。
水揚げのタイミングや出荷量に応じて便を分けることで、効率よく・かつ確実に鮮度を保って届けることができるのです。
鮮魚の「追っかけ便」が特に厳しい理由
数ある生鮮食品のなかでも、鮮魚の輸送は特に過酷です。
理由はシンプルで、「鮮度=価値」が如実に価格へ反映されるためです。
市場では、到着時間がたった30分違うだけでも評価や価格が大きく変わることもあります。
このため、ドライバーは時間との戦いを強いられます。
深夜に積み込み、早朝の市場開場前に確実に届ける必要があり、天候や交通状況による遅延も許されません。
また、氷詰めのコンテナや活魚を扱うケースも多く、運転技術だけでなく体力も求められる現場です。
追っかけ便のドライバーは、まさに「市場の時間を守る最前線」。鮮魚の命を預かるプロフェッショナルともいえる存在なのです。
仕事の流れとドライバーの一日
「追っかけ便」のドライバーは、一般的な配送業務とは違い、時間との戦いのなかで働いています。
とくに鮮魚を扱う場合は、限られた時間内に市場まで商品を届ける必要があるため、一日のスケジュールにも独特の流れがあります。
ここでは、実際の業務の流れやドライバーの一日を具体的にイメージできるように解説していきます。
出発〜積み込みから卸市場までの流れ
仕事は通常、夜中または早朝から始まります。
まずは指定された港や水産業者の集荷場へ向かい、鮮魚を積み込みます。
このとき氷詰めされた魚箱や活魚用のタンクなど、取り扱いにも注意が必要です。
積み込みが完了したら、他のトラックとタイミングをずらして出発。まさに“追っかけ”るように次々と走り出します。ここで重要なのが時間管理とルート選定。
数分の遅れが市場での評価に直結するため、渋滞情報や天候にも常に注意を払わなければなりません。
荷降ろし〜帰社までのスケジュールの実例
市場へは、開場時間の前後を目指して到着します。
荷降ろしは到着順で行われることが多く、少しでも早く到着できれば、良い場所で荷を下ろすことができ、市場関係者の評価も上がります。
荷下ろし後は伝票整理や軽い清掃作業を終え、場合によってはそのまま次の便の準備に入ることもあります。
会社へ戻るのは午前中〜昼頃が多く、その日のうちに再出発することもあれば、翌日に備えて休息を取る場合もあります。
運転以外の肉体・メンタル面の負担
「追っかけ便」の仕事は、単に運転するだけではありません。
重たい発泡スチロールや氷入りのコンテナの積み降ろし、悪天候下での作業、そして何よりも厳しい時間管理が求められるため、精神的なプレッシャーも大きいのが特徴です。
また、深夜や早朝の運転が日常的になるため、生活リズムの調整も必要です。
体調管理や安全運転への意識が欠かせない現場といえるでしょう。
資格・必要なスキル・適性
「追っかけ便」の仕事に興味があっても、自分に務まるのか不安に思う方も多いのではないでしょうか。
実際、この仕事には運転技術だけでなく、体力や時間管理能力など、いくつかの適性が求められます。
この章では、必要な資格や求められるスキル、どんな人がこの仕事に向いているのかを詳しく見ていきましょう。
運転免許・車種・経験の目安
追っかけ便で使用されるトラックは、中型から大型車両が中心です。
そのため、最低でも中型自動車免許が必要となるケースが多く、車両によっては大型免許が必要です。
未経験でも採用される場合はありますが、物流業界での経験や、市場への納品経験があると歓迎されやすくなります。
また、バック駐車や狭い市場構内での運転が求められるため、ある程度の運転スキルと慣れも必要です。
運転技術以外に求められるもの
追っかけ便では、単に荷物を運ぶだけでなく、時間との戦いが日常です。
そのため、以下のようなスキルや能力が求められます。
- 時間管理能力:市場開場前に到着するための逆算力
- 体力・持久力:重い荷物の積み下ろしや深夜作業に耐える力
- 注意力・集中力:深夜運転や雨天でも正確に運転できる判断力
- 人間関係構築力:荷主・市場関係者との円滑なコミュニケーション
特に「誰よりも早く、正確に届ける」ことが評価される現場なので、几帳面さや責任感も重視されます。
向いている人・向いていない人
この仕事に向いているのは、次のようなタイプの人です。
- 朝型・早起きが得意な人
- 体力に自信があり、多少の力仕事も苦にしない人
- 時間を守るのが得意な人
- コツコツとした作業が好きな人
反対に、生活リズムを崩しやすい人や、長時間の運転が苦手な人、人とのやり取りが極端に苦手な人には、やや厳しい職種かもしれません。
給料・年収・働き方の実情
「追っかけ便」は過酷な仕事として知られる一方で、その分収入面でのメリットもあると言われています。
では実際、どれくらいの給料がもらえるのか?どんな働き方になるのか?気になるお金と労働環境の実態を解説します。
年収目安・給与水準
追っかけ便のドライバーの年収は、地域や勤務先によって差がありますが、年収450万〜600万円前後が一つの目安です。
経験や保有資格(大型免許・フォークリフトなど)、夜間・深夜手当、繁忙期の稼働量などによっては、それ以上を稼ぐケースもあります。
一般的なルート配送ドライバーに比べると、やや高水準の給与設定であることが多いのが特徴です。
働き方(長距離・深夜・早朝)による違い
追っかけ便の働き方は、「深夜出発〜早朝市場到着」が基本パターンです。
距離によっては、長距離運行(片道200〜400km)になることもあり、その分拘束時間が長くなる傾向にあります。
走行距離や時間によって手当が上乗せされるケースも多いため、距離が長いほど収入は高めになる傾向があります。
また、深夜・早朝手当が充実している会社では、安定した月収を得ることができます。
注意すべき働き方の落とし穴
収入が高めとはいえ、追っかけ便には過酷さやリスクもつきものです。
- 拘束時間が長くなりがち
- 生活リズムが崩れやすい(夜間運行中心)
- 時間厳守が絶対(延着に厳しい)
- 天候・交通事情に左右されるプレッシャー
特に「市場への到着時間」が評価や荷主との関係に大きく影響するため、精神的な負担が大きいという声もあります。
収入面だけで判断せず、自分の体調管理や家庭との両立ができるかどうかも、長く続けるうえでの重要な判断材料です。
鮮魚追っかけ便の現場で知っておきたいポイント
追っかけ便の仕事は、運転技術や体力だけでなく、現場独自の慣習や人間関係も重要な要素です。
特に鮮魚輸送の現場には、他の運送とは異なる特有のルールや緊張感があります。
ここでは、実際の現場で押さえておきたいポイントや、知っておくべき裏事情を紹介します。
荷主・市場との関係・競争構造
追っかけ便では、市場での荷降ろし順や荷主との信頼関係が仕事の成果に大きく影響します。
特に卸売市場では、トラックの到着順で荷物の扱いが決まることも多く、わずかな遅れが不利な扱いにつながることもあります。
また、荷主にとっても「時間通り・鮮度を保って」届けてくれるドライバーは貴重な存在です。
一度信頼されると、継続的に仕事を任されやすくなる反面、ミスがあればすぐに仕事を外されることもあるシビアな世界です。
安全運転・鮮度保持・トラブル対応
鮮魚輸送では「ただ早く運べばいい」というわけではありません。
氷の扱い・積み方・温度管理にも細かな注意が必要です。
走行中も荷崩れや温度上昇を避けるため、急ブレーキや急カーブは厳禁。
トラックの運転技術だけでなく、鮮度を守るための工夫や知識が必要です。
また、道路渋滞や交通事故などのトラブルに見舞われたときの対応力も問われます。
代替ルートの判断や、荷主・市場への迅速な連絡が信頼維持につながります。
働き方改革・法令順守の観点からの変化
近年は、国の働き方改革や運送業界の法令強化により、過度な長時間労働の見直しが進められています。
一部の企業では、「ダブルドライバー制」や「休憩時間の確保」「運行管理体制の強化」など、ドライバーの負担軽減を目的とした取り組みが始まっています。
その一方で、人手不足により依然として過密スケジュールでの運行を求められる現場も存在しており、就職・転職の際には会社ごとの実情をよく確認することが大切です。
「追っかけ便」を選ぶ前に確認すべきこと
追っかけ便の仕事は、やりがいがある一方で、身体的・精神的な負荷も大きい仕事です。
そのため、就職・転職を検討している方は、事前にしっかりと情報を集め、自分のライフスタイルや価値観と照らし合わせることが重要です。
ここでは、仕事を始める前にチェックしておきたいポイントを整理してご紹介します。
会社の勤務条件・手当などの確認ポイント
求人情報を見るときは、給与額だけで判断しないことが大切です。
以下のような条件をよく確認しましょう。
- 深夜・早朝・長距離運行の手当が支給されるか
- 休憩・仮眠時間の確保が制度として整っているか
- 拘束時間の上限や、違反の有無
- 事故・延着時の責任負担の明確化(ペナルティがあるか)
- ドライバーの安全管理体制や装備(ドラレコ、バックモニターなど)
給与が高くても、過度な拘束や無理なスケジュール管理が常態化している会社は避けるのが無難です。
自分の生活・適性に合っているかどうか
追っかけ便は、日中に活動する一般的な仕事とは異なり、生活リズムが崩れやすい仕事です。
家族との時間、睡眠、体力面など、長期的に続けられるかを考える必要があります。
以下のような項目を自己チェックしてみてください。
- 早朝や深夜の運転にストレスを感じにくいか
- 長時間の一人作業が苦にならないか
- 食事・睡眠のコントロールが得意か
- 家族の理解・協力が得られるか
無理のある働き方は長続きせず、体調や人間関係に影響を及ぼす可能性もあるため、「自分に合っているか」を冷静に判断することが重要です。
転職・応募時のチェックリスト
実際に応募を考える際は、以下のような項目を面接時や会社訪問時に確認しておくと安心です。
- 仕事の一日の流れ・スケジュールの実例
- 荷物の内容・積み下ろし方法(どの程度の体力が必要か)
- 拘束時間・休憩時間の扱い方
- 交通トラブルや延着時の対応体制
- 未経験者への研修制度の有無
- 他のドライバーの在籍年数・離職率
事前の情報収集と質問が、納得のいく職場選びと長期的なキャリア形成に直結します。
まとめ |鮮魚「追っかけ便」で働くために覚えておきたいこと
鮮魚の「追っかけ便」は、ただのトラック輸送ではなく、時間との勝負、鮮度の維持、そして市場との信頼関係が求められる、まさにプロフェッショナルの現場です。
その分、一般的な運送業よりも収入面での魅力があり、やりがいを感じやすい仕事でもあります。
一方で、深夜や早朝の運行、重い荷物の積み降ろし、プレッシャーのかかるスケジュールなど、過酷な一面も無視できません。
仕事として選ぶには、自分の適性やライフスタイル、体力、そして長く続けられるかどうかをしっかりと見極める必要があります。
これから追っかけ便の仕事にチャレンジしたいと考えている方は、まずは業界や企業の実情をよく調べ、信頼できる職場を選ぶことが大切です。
鮮魚を新鮮なまま届けるという使命感と責任を胸に、プロドライバーとしての一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
