業務委託として働いているけれど、契約書を取り交わさないまま業務を進めている。
そんな状況で「辞めたい」と思ったとき、「何かトラブルにならないか」「すぐ辞めてもいいのか」と不安になる方は少なくありません。
たしかに契約書がないと、法的に曖昧な部分が多く、やめ方を間違えると報酬未払いなどのトラブルに発展する可能性もあります。
この記事では、契約書がない業務委託を辞めたいときに考えるべきポイントや注意点、そして円満に辞めるためのコツを、具体例とともに解説します。
業務委託に契約書がなくても契約は成立している?
契約書が存在しないと「契約していない」と思いがちですが、法律上は必ずしもそうとは限りません。
口頭やメールのやりとりでも契約は成立する
民法上、契約は「当事者の合意」で成立します。
そのため、書面がなくても、業務内容や報酬、納期などについて口頭やメール・チャットで合意していれば、契約として有効とみなされます。
書面がないと“証明”が難しくなる
ただし、トラブルが発生した際に「言った・言わない」の争いになる可能性が高く、相手が契約の存在を否定してきた場合に自分を守る材料が少なくなってしまいます。
仕事を受けた事実が“契約の証拠”になることも
報酬の振込記録や、チャット・メールでの指示、納品物なども契約の証拠になり得ます。
契約書がない場合でも、業務の実績があれば「事実上の契約関係」が成立しているとみなされるケースもあります。
契約書なしで辞めたいと思ったときの注意点
契約書がないからといって、好きなタイミングで一方的に辞めるのはリスクがあります。
一方的な即日辞退は信頼関係の損失に
相手にとって業務委託とはいえ「戦力の一部」です。
突然の辞退は、業務に支障が出るだけでなく、「社会人としての信頼」を損なう行動と見なされる可能性があります。
引き継ぎや説明は最低限行うべき
関係が悪くても、最後まで誠意を持った対応が重要です。
未完了の業務があれば引き継ぎ方法を説明したり、中断時の状況を整理して伝えることで、トラブルの種を減らせます。
損害賠償リスクの可能性もゼロではない
委託内容によっては、途中で辞めることで相手に損害が発生し、それを理由に損害賠償請求されることもあります。
もちろん相当な理由や証拠が必要ではありますが、特に口頭契約では細かい条件が曖昧になっているケースが多いため注意が必要です。
円満に辞めるための伝え方と対応のコツ
穏便に関係を終えるためには、誠実なコミュニケーションと手順を心がけましょう。
最低でも1〜2週間前には辞意を伝える
辞める意向は、相手に余裕をもって対応してもらうために、できるだけ早く伝えましょう。
プロジェクト途中であっても、なるべく迷惑をかけない形で整理する工夫が求められます。
理由は「キャリア都合」など角の立たないものに
「報酬が安い」「方針が合わない」といった本音がある場合も、伝えると関係が悪化する可能性があります。
「他の業務との調整が難しくなった」「キャリアを見直したい」など、前向きかつ簡潔に伝えると印象が良くなります。
メールよりも直接か電話での連絡が基本
チャットやメールだけで済ませようとせず、できれば電話やZoomなどで直接話すことが望ましいです。
難しい場合でも、丁寧な文章での連絡と、その後のフォローを忘れずに行いましょう。
実際の相談事例とトラブルの体験談
現実に、契約書のない業務委託でトラブルになった事例は多数あります。
ここでは代表的な声を紹介します。
【相談例】「辞めたら報酬を払わないと言われた」
「LINEだけでやり取りしていたクライアントに辞めたいと伝えたら、『仕事を途中で放棄したから報酬は払えない』と言われた。納品済みの部分もあったのに…」(出典:弁護士ドットコム)
このようなケースでは、納品物ややり取り履歴を保存しておくことで報酬請求が可能になります。
【体験談】「口約束だけで仕事を続けていたら、突然内容を変えられた」
「最初は軽作業のはずだったのに、徐々に高度な内容に変わっていった。文句を言ったら『契約書もないし合意だろ』と強引に押し切られた」(出典:Yahoo!知恵袋)
合意内容はできる限り文面に残しておくことが自衛につながります。
「LINEで辞めたいと伝えたら無視された」
「チャットで何度も辞意を伝えたのに返事が来ず、最後にはブロックされた。報酬も未払いで泣き寝入り」
(出典:note)
記録をスクリーンショットしておき、最悪は内容証明郵便や法的措置も検討する必要があります。
契約書がないまま働き続けないための対策
「辞めたい」と思う前に、そもそも契約トラブルを避けるための工夫が必要です。
契約前に業務内容・報酬・納期を必ず文面で確認
最低限、仕事内容・報酬・納期・支払日などはメールや文書で明示してもらうようにしましょう。
曖昧なまま業務を開始するのは非常にリスクが高いです。
チャット履歴や納品記録を保存しておく
LINEやSlackなどのやり取りも、スクリーンショットやPDFで保存しておくと、後の証拠になります。
作業内容や納品記録もきちんと残しておきましょう。
次回以降は「契約書必須」の条件で依頼を受ける
書面がないまま業務を始めることのリスクを経験したら、次からは「契約書がないと請け負わない」と明言するのも立派な自衛手段です。
条件をクリアにできるクライアントを選ぶことが重要です。
まとめ
業務委託契約は、たとえ契約書がなくても口頭や実績で「契約が成立している」とみなされるケースがほとんどです。そのため、辞める際には感情的にならず、相手への配慮を持った対応が大切になります。
「辞める自由」はあっても、「やめ方」次第で信頼関係や報酬に影響が出ることを理解しておきましょう。
今後は契約内容を必ず文面で交わす習慣を持ち、自分の身を守るための準備を怠らないようにしましょう。